これでわかった!「会計上の見積りの開示」 第3回 新型コロナウイルス感染症の影響に関する開示

 公認会計士 山田善隆

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1.はじめに

本連載では,企業が企業会計基準第31号「会計上の見積りの開示に関する会計基準」(以下,「見積り開示基準」という)の趣旨に即した対応を行うためのヒントとなるように,多面的な視点からの解説を試みている。

今回は,特に新型コロナウイルス感染症(以下,「COVID-19」という)の影響の開示について開示例等を参考にしながら検討する。

なお,文中の意見にわたる部分は,筆者の私見であることをあらかじめ申し添える。

2.COVID-19の影響下の会計上の見積りの特徴

COVID-19の拡大は,全般的に見積リスクの上昇をもたらした。具体的には,COVID-19の影響について,前例として参考にできるものがなく,また,統一的な見解が存在しないなかで,経営者は,限られた情報から「一定の仮定」を形成して見積りを行うことが強いられている。

一方,財務諸表利用者にとっては,このような状況下において経営者がどのような仮定を置いて会計上の見積りを行ったのかという点やその不確実性の程度に重大な関心をもつようになっている。

このような状況を踏まえて,企業会計基準委員会(ASBJ)は2020年4月に,議事概要として「会計上...