不正事例に学ぶ子会社のリスク管理のポイント 第11回 コロナ禍における財務分析

有限責任 あずさ監査法人 マネジャー 池羽 芳郎

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1.コロナ禍が企業に与える影響

新型コロナウイルス感染症が発生してから約1年を経過しようとしていますが,現在も感染は拡大し続けており,企業の業績に与える影響はリーマンショックを超えるともいわれています。

2020年4月から9月(累計)までの決算では,売上高は前年比15%減の「260兆4951億円」,純利益は前年比38%減の「10兆808億円」(日本経済新聞11月17日)になったとのことであり,その影響の大きさがわかります。一方で,このような状況下においても全体の「7社に1社の純利益が過去最高」(日本経済新聞11月10日)とのことであり,人の動きを制限するというコロナ禍が企業の業績に与える影響は,企業に応じて多様であることがわかります。

コロナ禍における経済環境の大きな変動は企業にどのような影響を与えているのでしょうか。企業を業種に基づき4つに分類し,コロナ禍が企業の業績に与える影響,企業の倒産リスクに与える影響,会計上の見積りに与える影響について検討していきます。

2.コロナ禍による影響予測の4分類

Covid-19を起因とした影響は業界ごとに大きく異なります。KPMGでは業界への影響予測に基づ...