IFRSをめぐる動向 第129回 単一の取引から生じた資産及び負債に係る繰延税金(IAS第12号「法人所得税」の修正)の最近の動向

PwCあらた有限責任監査法人 公認会計士 森間 純平

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1.はじめに

本連載は,主に国際会計基準審議会(IASB)の月次会議等での討議内容に基づき,最新のIFRSをめぐる動向を伝えることを目的としています。今回は,IFRS基準の狭い範囲の修正の可能性についてIASBで議論されている,「単一の取引から生じた資産及び負債に係る繰延税金」(IAS第12号「法人所得税」の修正案)について説明します。IASBは,当初認識の例外の範囲を狭めて,同額で相殺し合う一時差異を生じさせる取引に適用しないことを暫定的に決定しました。以下では,IASB会議においてこれまで行われた議論の概要についてご紹介します。なお,文中の意見にわたる部分は,筆者の私見であることをあらかじめお断りしておきます。

2.背景

リース取引について,IFRS第16号「リース」に基づき,リースの開始日に使用権資産(以下,「リース資産」という。)とリース負債が認識されます。また,廃棄義務について,IAS第16号「有形固定資産」とIAS第37号「引当金,偶発負債及び偶発資産」に基づき,当初認識時に資産と負債が認識されます。このような取引は,当初認識時に同額の資産と負債の会計上の帳簿価額と税務基準額との...