年頭所感《日本公認会計士協会 会長 手塚 正彦》

VUCAの時代に公認会計士として思うこと

日本公認会計士協会 会長 手塚 正彦

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謹んで新年のお慶びを申し上げます。

平素より当協会の会務にご理解ご支援を賜り,御礼申し上げます。

10年ほど前から,混沌とした社会・経済環境を,不安定(Volatility),不確実(Uncertainty),複雑(Complexity),曖昧(Ambiguity)という4語で表すVUCAという言葉が使われるようになりました。コロナ禍によって,以前にも増してVUCAを実感し,世界が新しい日常を模索する今,公認会計士として思うことを述べることといたします。

1.新常態における決算と監査

コロナ禍により,生活様式や働き方が大きく見直されたことを踏まえ,監査人は,実地棚卸立会の方法の工夫,残高確認の電子化,デジタル化された監査証拠の信頼性検証手続の明確化,監査報告書の自署・押印廃止,デジタルデータを活用した高度な分析技術の開発と活用などにスピードを上げて取り組む必要があります。

一方,企業も改革に取り組むことが求められ,業務の見直し,ICT基盤の整備,データや情報のデジタル化とその活用の促進,そしてそれらに適合するガバナンスと内部統制の整備が今後の重要な課題になると考えます。

2.株主総会と決算報告の在...