時事談論 vol.90「司法判断と会計判断」

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■最高裁判決

2020年11月27日,最高裁判所第二小法廷において,開示禁止処分等請求控訴,同附帯控訴事件についての判決が示された(令和1(受)1900)。原審は,2021年7月17日に東京高裁において示されたもので,最高裁の判断は,高裁の判断の破棄差戻であった。

本件は,日本公認会計士協会と監査事務所との間での係争事案である。

2014年に当該監査事務所が担当し,無限定適正意見を表明した上場会社の監査に関して,日本公認会計士協会の品質管理レビューが行われ,2015年5月に,限定事項を付した結論が表明された。

つまり,当該監査事務所は,当該会社の現金預金につき特別な検討を必要とするリスクを識別していたものの,現金勘定の出入金記録の確認のための現金元帳と通帳及び領収書等との突合を監査対象期間の一部につき実施していなかったことにつき,「品質管理の基準が求める個々の監査業務における品質管理の手続を実施していない事実」(「基準不適合事実」)と認定したのである。

上場会社監査事務所登録制度では,品質管理レビューにおいて表明された限定事項が,監査事務所の表明した監査意見の妥当性に重大な疑念を生じさせるもので...