Q&Aコーナー 気になる論点(281) IASBによる共通支配下の企業結合の検討(3)

‐簿価法の適用‐

早稲田大学大学院 会計研究科教授 秋葉 賢一

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 国際会計基準審議会(IASB)が2020年11月30日に公表したディスカッション・ペーパー(DP)「共通支配下の企業結合」(コメント期限は2021年9月1日)では,共通支配下の企業結合に簿価法を適用する場合,移転先の企業は,支払対価と受け入れた資産・負債の簿価との差額について,どのように処理することを提案しているのでしょうか。

IASBの予備的見解は,当該差額を資本で認識し,その資本の内訳を定めないというものです。

<解説>

簿価法の適用(1)‐問題の所在

DPでは,[図表1]の移転先の企業(receiving company)の連結財務諸表上,以下の場合に簿価法を適用することをIASBの予備的見解としています(2.55項,4.1項)

(1) 移転先の企業の非支配株主に影響を与えない,すべての共通支配下の企業結合

(2) 特定の状況において,非公開の移転先の企業の非支配株主に影響を与える共通支配下の企業結合

[図表1] 共通支配下の企業結合における移転先の企業

DPでは,IFRSが簿価法②をどのように適用すべきかを示しておらず,実務上,以下のように様々な簿価法が使用されているとしています(4...