実務視点で読む 会計・監査裁判例 第4回 過払金訴訟に係る不当利得返還請求権が確定したこと(後発的事由)を理由とした法人税の更正の請求が否認された事件(最判令和2・7・2)

日本大学商学部 教授 紺野 卓

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1.裁判例のポイントと選者の視点

破産者株式会社クラヴィス(以下,A社)の破産管財人Xは,平成7~17年度までの(11年度除く)各事業年度においてA社が顧客から支払いを受けた制限超過利息等についての不当利得返還請求権に係る本件破産債権が,その後の破産手続で確定したため,本件各事業年度に計上した益金が本件破産債権に対応する分だけ過大であったとして国税通則法23条2項1号等に基づき本件各更正の請求をしたところ,所轄税務署長より更正をすべき理由がないとする旨の各通知処分を受けた。

Xはこれを不服として,主位的には各通知処分の取消しを求める,予備的には上記制限超過利息等に対応する法人税相当額の一部についての不当利得返還等をそれぞれ求めて国(以下,Y)を提訴した事件が本件となる。

第一審はXの主位的主張及び予備的主張をいずれも棄却したためXが控訴したが,高裁は第一審判決を取り消してXが主張する更正の請求を認容した。高裁判決を不服としてYが上告したが,最高裁は,原判決を破棄しXの控訴を棄却した。

本判決は今後の破産実務に対する影響や法人税の更正の請求に係る国税通則法の解釈等を含めて参考となる上,過年度遡及...