Q&Aコーナー 気になる論点(282) 国際統合報告フレームワークの改正

‐初めての改正と今後の戦略‐

早稲田大学大学院 会計研究科教授 秋葉 賢一

( 18頁)

 国際統合報告評議会(IIRC)は,2021年1月19日に,「国際統合報告フレームワーク」(IRフレームワーク)を改正しました。どのような点を改正しているのでしょうか。

IIRCは,IRフレームワークにおいて,統合報告書に対する責任表明や,アウトカムについてアウトプットと区別し,価値の保全(preservation)と毀損(erosion)との関係を示すことなどを改正しています。

<解説>

経緯

IIRCは,2020年の創立10周年に合わせて,進化する市場の状況に対応し,統合報告とその思考をさらに浸透させるようにIRフレームワークを改正するために,まず,2020年2月から3月までの30日間,3つのトピックペーパー(統合報告書に対する責任,ビジネスモデルに関する検討事項,進むべき道を描く)を通じて,市場からのフィードバックを募集しました。

その後,2020年5月に「IRフレームワーク コンサルテーション草案」を公表し,90日間のコメント募集を行い,2021年1月に,初めてIRフレームワークを改正しました。今回の改正では,主に以下に焦点をあてています。

(1) 統合報告書に対する責任表明から,作成...