企業に求められる「記述情報の開示の充実」とは 第1回 企業に対する新たな情報ニーズ

有限責任 あずさ監査法人 公認会計士 関口 智和

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1.はじめに

2020年3月期より,有価証券報告書における記述情報の開示が本格的に拡充されている。これに加えて,最近,「気候変動リスク」や「ESG要素」への対応が社会的にも企業経営者にも大きなテーマとなっており,これらの対応にあたって,「企業開示のあり方」が注目されている。さらに,新型コロナウイルスの感染症の拡大が収束しない中で,同感染症が事業に与える影響をどのように開示すべきかは,2021年3月期決算においても重要なテーマとなろう。こうした状況を踏まえ,企業の経理・財務部門において,どのような開示対応が必要かについて頭を悩ませているのではないかと考えられる。

このため,今後,「記述情報の開示の拡充」というテーマで全4回の連載を通じて,主に以下について解説していく。

① 企業に対する新たな情報ニーズ(第1回)

② 企業開示へのESG要素の反映(第2回)

③ 新型コロナウイルスの感染拡大が企業開示の変革に与える影響(第3回)

④ 経理・財務担当者が2021年3月期及びその後の対応を検討するうえでのヒント(第4回)

第1回の本稿では,①なぜ今企業開示のあり方が問われているのか,②どのような情報ニーズが新...