企業に求められる「記述情報の開示の充実」とは 第2回 企業開示へのESG要素の反映

有限責任 あずさ監査法人 公認会計士 関口 智和

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1.はじめに

2020年3月期より,有価証券報告書における記述情報の開示が本格的に拡充されている。これに加えて,最近,「気候変動リスク」や「ESG要素」への対応が社会的にも企業経営者にも大きなテーマとなっており,これらを企業開示(有価証券報告書における記述情報等)にどのように反映すべきかについても関心が高まっている。

本稿では,連載企画「企業に求められる『記述情報の開示の充実』とは」の第1回目( No.3495 参照)「企業に対する新たな情報ニーズ」の内容を踏まえ,ESG要素について期待されている開示情報やこれに関する最近の動向について解説する。なお,本文中の意見に関する部分は筆者の私見であることを申し添える。

2.ESG要素の情報開示に係る歩み

ESGは,環境(Environment),社会(Social),ガバナンス(Governance)の英語の頭文字を合わせた造語である。これらESGの要素は,国際連合によって進められている持続可能な開発に関する17の目標(SDGs)との親和性も高く,企業経営においても重要な課題となっている。また,投資家にとっても,ESG要素は,中長期的な視点から投資判断を...