Q&Aコーナー 気になる論点(283) IASBによる規制資産・負債の公開草案(1)

‐何が提案されているか‐

早稲田大学大学院 会計研究科教授 秋葉 賢一

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 国際会計基準審議会(IASB)は,2021年1月28日に,公開草案「規制資産及び規制負債」を公表しました(コメント期限:2021年6月30日)。この公開草案では,何を提案しているのでしょうか。

公開草案では,既存のIFRSによる情報を補完する会計モデルとして,当期に提供された財・サービスに対して請求できる報酬(合計許容報酬)を,当期の財務業績に反映させるという原則に基づき,期末に存在するすべての規制資産(請求を増額することができる現在の権利)と規制負債(請求が減額される現在の義務)を認識し,それらの増減によって期中に生じた規制収益・費用の認識を提案しています。

<解説>

経緯

料金規制は,企業の料金規制活動から生じる収益,利益,キャッシュフロー(CF)の金額やタイミングに大きな影響を与えます(BC2項)。このため,1982年公表の米国財務会計基準書(SFAS)第71号「特定の種類の規制の影響に関する会計処理」又は類似した基準では,料金規制に起因する規制残高を資産・負債として認識することを許容又は要求しています(BC4項)。

2005年からの多くの国によるIFRSの初度適用に先立ち,IASB...