<IFRS COLUMN>暖簾に腕押し 第30回 市場か倫理か(財務vs非財務)(その5)

 国際会計基準審議会(IASB)前理事 鶯地 隆継

( 22頁)

TCFD

2017年6月15日,マイケルR. ブルームバーグ氏はG20の組織である金融安定理事会(Financial Stability Board : FSB)議長宛てに1通のレポートを提出した。このレポートのタイトルは,「気候関連財務情報開示タスクフォースの勧告(Recommendations of the Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」,有名なTCFDレポートである。このレポートが企業に与えた影響は大きかった。TCFDの詳細説明は不要かと思うが,一言で説明するならば,FSBが2015年12月に,金融市場参加者が気候に関係するリスクを理解するのに有用な一貫した「開示方法」を設計するために設置した産業界主導のタスクフォースである。タスクフォースは,気候関連情報開示の仕組みを整備することにより,十分な情報に基づく投資や信用供与(もしくは融資), 保険引受の意思決定に寄与する役割を担う。

企業の一貫した情報開示が整備されることにより,炭素関連資産の集中度や金融システムがさらされている気候関連リスクに関する市場関係者の...