時事談論 vol.96「ある会計士の一日」

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●第3四半期でなぜ計上しないのか?

朝7時を過ぎるとスマホの社内メール着信音が急に増える。深夜早朝のメール送信を控えるような取り組みは,メールソフトの送信予約機能でずいぶん楽になってきた。

でも,それに混じってクライアントからの電話やメールがある。え?クライアントって言うな?報酬をもらっているのだから「お客様」に決まってるだろう。「お客様は神様」なんて思ってる人の方が間違いなのに,わかってないな。

「先生,うちはまだあの施設は減損するって決めてないですよ。」

「ええ,聞いてます。でも来月の役員会で落とすって決めるんでしょ?2月10日過ぎに『落とさない』って開示したものを3末で落としたら『わかってたことじゃないか』『悪い情報の開示がおそいんじゃないか』って言われますよ。」

四半期報告書制度が導入されてきてから何度となく使ったセリフだ。監査の仕事は不正や会計処理の誤りを見つける仕事と思っている人がいるが,それは半分で,残りは正しく,誤解されず,恥ずかしくない開示を促すことだと思ってる。いくら「会計基準に合致している」と言ったところで,「もう,遅いよ」って言われたら,本当は意味がない。

落とせばいいって...