IFRSをめぐる動向 第131回 「基本財務諸表」プロジェクトの最近の動向(公開草案に対するフィードバックと再審議の計画)

PwCあらた有限責任監査法人 米国公認会計士 村山 華

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Ⅰ.はじめに

本連載は,主に国際会計基準審議会(IASB)の月次会議等における討議内容に基づき,IFRSをめぐる最新の動向を伝えることを目的としています。今回は,財務諸表における情報の伝え方の改善として,特に損益計算書に焦点を当てた基準開発が進められている「基本財務諸表」プロジェクトの動向について紹介します。IASBは,2019年12月に公開草案「全般的な表示及び開示」を公表し(コメント期限は2020年9月末),2020年12月より審議を再開しています。本稿では,2020年12月・2021年1月開催のIASBの月次会議で討議された公開草案に対するフィードバックおよび再審議の計画を中心に説明します。なお,本稿の内容は今後のIASBの討議状況によって変更される可能性があり,また文中の意見にわたる部分は筆者の私見であることをあらかじめお断りします。

Ⅱ.公開草案の主な論点とフィードバック

公開草案では,図表1のとおり,財務諸表全体の表示・開示に関して様々な変更が提案されました。特に①の損益計算書の表示に関する提案は,プロジェクトの発端となる論点であり,多くの企業に関係することから,高い関心を集めま...