企業に求められる「記述情報の開示の充実」とは 第3回 新型コロナウイルス感染症と企業開示

有限責任 あずさ監査法人 公認会計士 関口 智和

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1.はじめに

2020年3月期より,有価証券報告書における記述情報の開示の充実に向けた実務での取組みが本格化している。これは,折しも,新型コロナウイルスの感染拡大と時期を同じくするものであった。このため,2020年3月期から開始された記述情報の開示の充実を振り返り,今後の企業開示のあり方を考える際,新型コロナウイルス感染症と企業開示との関係に着目することは,今後の記述情報の開示の充実に向けた具体的な留意事項を検討するうえで有用と考えられる。

本稿では,連載企画「企業に求められる『記述情報の開示の充実』とは」の第1回目( No.3495 )及び第2回目( No.3497 )で解説した内容を踏まえたうえで,特に記述情報に焦点を当て,①2020年3月期決算以降,国内外においてコロナ影響をどのように企業開示に反映するべきとされたか(乃至,反映されたか)について解説するとともに,②コロナ禍が今後の企業開示のあり方にどのような影響を与えると考えられるかについて考察する。なお,本文中の意見に関する部分は筆者の私見であることを申し添える。

2.記述情報の開示の充実

新型コロナウイルス感染症と企業開示との関係について解...