Q&Aコーナー 気になる論点(291) 経営者による説明の公開草案(1)

‐2010年版からの改善‐

早稲田大学大学院 会計研究科教授 秋葉 賢一

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 国際会計基準審議会(IASB)は,2021年5月27日に,IFRS実務記述書第1号を改正する公開草案「経営者による説明」を公表しました(コメント期限:2021年11月23日)。この公開草案では,目的ベースのアプローチを提案していますが( 本誌No.3509(2021年6月7日号) ),それはなぜでしょうか。

公開草案では,報告事項を詳細に定める「パースペクティブ・アプローチ」ではなく,情報が満たすべき開示目的を特定し,その開示目的を達成するために何を開示すべきかについてのガイダンスを提供する「目的ベースのアプローチ」を提案しています。これは,企業の財務業績や財政状態に影響を及ぼした,又は将来及ぼす可能性のある幅広い事項は,企業固有と考えられるためとしています。

<解説>

経緯

2010年12月に公表されたIFRS実務記述書(PS)第1号「経営者による説明」(Management Commentary)は,IFRSに準拠して作成された財務諸表に関連する有用な経営者による説明を示す際に役に立つことを目的としています。

しかし,公開草案によれば,経営者による説明は,必ずしも投資者・債権者に必要な情報...