Q&Aコーナー 気になる論点(292) 経営者による説明の公開草案(2)

‐財務報告の一部として‐

早稲田大学大学院 会計研究科教授 秋葉 賢一

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 国際会計基準審議会(IASB)は,2021年5月27日に,IFRS実務記述書第1号を改正する公開草案「経営者による説明」を公表しました(コメント期限:2021年11月23日)。経営者による説明は財務報告の一部であるため,公開草案は,概念フレームワークの有用な財務情報の質的特性を必要とする提案をしているのでしょうか。

公開草案では,経営者による説明において現在提供されている情報は,必ずしも有用ではなく,特に,概念フレームワークが有用な財務情報の「質的特性」として記述している「属性」を欠いている場合があるとしています。このため,平易な文言を使用し,概念は同じですが,より日常的な呼称を使用して,各属性を記述することを提案しています。

<解説>

経営者による説明の目的

公開草案において,経営者による説明は,以下の情報提供を提案しています(3.1項)。

(1) 財務諸表において報告される企業の財務業績や財政状態についての投資者・債権者の理解を高める情報

(2) 長期を含むすべての期間において,価値を創造しキャッシュフロー(CF)を生み出す企業の能力に影響を及ぼす可能性のある要因についての洞察をもたらす...