ナッジで解決!経理パーソンの悩みごと 第6回 定量的な意思決定こそ注意する!「投資評価の仕方」ナッジ

管理会計ラボ株式会社 代表取締役・公認会計士 梅澤 真由美

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前回( No.3513・30頁 )は,定例資料として代表的な月次決算資料にまつわるナッジを取り上げました。続く今回は,発生頻度は下がるものの,会社に大きな影響を与える投資案件の評価や意思決定を取り上げます。これらは近年,ファイナンスと呼ばれて注目されている分野でもあります。実は,ここにも非常に多くのナッジが存在しているのです。

1.得より損がだんぜん気になる

以前,「所得が少ない人ほど数多くの保険に入る」という話をファイナンシャルプランナーの方から聞いたことがあります。その方曰く,医療保険は特にその傾向が強いそうです。なぜかと聞いたところ,資産が不十分でないために,万が一の場合に生活を維持する頼りとして保険を契約することが多いということでした。確かにそれには経済合理性があると感じます。ただ,それだけではなく,心理的な側面も大きいということでした。どういうことかというと,お金が少ない人ほど,損失がより気になるという性質があるというのです。言い換えれば,お金が少ない人の方が同じ損失でもインパクトが大きいということです。この特性は,ナッジを含む行動経済学の分野では,「期待効用理論」と呼ばれています。...