役員の報酬・賞与・慰労金の基本と実務Q&A<206> 報酬規制に対する取締役の救済策(2)

 弁護士 小林 公明

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9 各判例とその検討

前回( 本誌No.3515号 参照)に続き,質問に対する回答として,信義則を適用した各判例の考慮事由の詳細等につき述べる。

なお,以下の各四角枠外の「(2)信義則を適用すべき考慮事由としては,」中の(2)は,同枠内の各「(1)判示」に続く番号表記である。

〔1〕最判平21年12月18日 判例秘書L06410125上告人:退任取締役,被上告人:会社(1)判示(①②③の番号は筆者注)「 2 原審が確定した事実関係の概要等は,次のとおりである。(中略‐筆者注)(4) 被上告人においては,退任取締役に対する退職慰労金は,通常は,事前の株主総会の決議を経ることなく,次の手続により支給されていた。ア 代表取締役は,経理部の担当者に対し,当該取締役に支給すべき退職慰労金の額の算定を指示する。イ 代表取締役は,経理部の担当者が本件内規に従って算定した退職慰労金の額を確認し,その支給について決裁する。ウ 代表取締役は,上記退職慰労金を当該取締役に送金するよう改めて指示する。エ 代表取締役は,次期の定時株主総会において,支給済みの退職慰労金の額を退任取締役ごとに明らかにして,計算書類の承認を受...