書評 浜田 康 著『市場の守り人~証券取引等監視委員会の使命』

(同文舘出版/本体3,400円+税)

青山学院大学名誉教授・大原大学院大学教授  八田進二

( 28頁)

1.本書の生い立ち

本書は,著者が証券取引等監視委員会(以下,監視委員会)の委員就任以降,監視委員会の使命や業務内容について考え,日本の証券市場の公正性・公平性の確保・向上のために,もてる機能を拡大・強化できないかを自問しながら,次代の関係者に託した熱い思いを込めたメッセージである。本書刊行のほぼ1年前,浜田氏から1通の相談メールが届いた。それは,監視委員会委員として,証券市場について勉強する中で,新たな疑問や見直すべき事項等について自分なりにまとめた覚書があるが,それを書籍化して社会に貢献したいという内容であった。既にまとめていた原稿は,全10章で書籍化したら優に500頁を超える膨大な分量であった。そこで,返信として,評者を含め,この監視委員会の在り様については,殆どの者が熟知していないことから,歴史の証人として,是非,出版して社会貢献をしてもらいたいとの思いを伝えた。しかし,その際,各章の記述内容の推敲と,資料的な個所についての全面削除による分量のスリム化,加えて,対象とする読者を明確に想定することで,読み手指向の書籍にしてはどうかとの感想を伝えたのである。果たせるかな,評者の勝手な...