会計知識録 第17回 為替変動の影響は財務諸表にどう表れるのか?

 公認会計士 溝口 聖規

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急激な円安は,自動車メーカーや電機メーカーなどの輸出型企業にとっては追い風となる一方,材料等を海外から輸入している会社にとってはコストアップに繋がります。また,海外に多くの子会社を抱える会社にとって為替変動は,海外子会社の財務諸表の換算を通じて連結財務諸表へ影響を及ぼす要因となります。

今回は,為替変動の影響が財務諸表にどう表れるか,また,為替変動への会社の対応策について事例を交えて解説します。なお,外貨建取引等の換算の影響は財務諸表の広範囲に及ぶため,詳細は割愛し重要な点に絞って解説したいと思います。

P/Lへの影響

まず始めに,損益計算書(P/L)への影響から見ていきましょう。

外貨建ての売上,仕入などの収益,費用は,原則として取引時の為替レートで円換算されます。なお,期中平均レートで換算することもできます。

例えば,同じ1,000ドルの売上であっても,取引時の為替レートが100円/ドルでは100,000円,120円/ドルでは120,000円と,円換算後の売上高は異なります。前期に比べて為替レートが円安に変動すると,円換算後の売上高は増加します。これが,輸出型企業における円安による増収効果で...