KAMの本適用に関する座談会 第1回 監査役等編

 日本監査役協会最高顧問・日本航空(株)社外監査役・元三井物産(株)常勤監査役 岡田 譲治
 (株)じげん常勤社外監査役・元三井金属鉱業(株)常勤監査役・元カルチュア・コンビニエンス・クラブ(株)常勤社外監査役 尾上 正二
青山学院大学大学院会計プロフェッション研究科 教授 町田 祥弘

( 12頁)
2021年3月期から監査上の主要な検討事項(KAM)の本適用が始まった。KAMの導入により,監査の質および信頼性の向上のほか,監査人と監査役等との間のコミュニケーションや監査人と経営者との間のディスカッション等の充実,さらには利用者による監査や財務諸表への理解が深まるなど,多くの効果も期待されるところだ。昨年,早期適用した企業は約50社に留まり,ほとんどの企業において,今年が適用初年度となった。そこで,本誌では,実際にKAMの作成や利用に携わった各当事者を迎えて,座談会を開催した。第1回は,監査役等編。今回,対応した経験を踏まえて,KAMの決定プロセスへの関わり,監査人との議論の焦点や今後の課題などについて話を伺った。

町田祥弘氏(以下,町田) 2021年3月期の決算にかかる監査報告書が公表され,実質的に本年度から一斉適用となったKAMの実務が日本でもスタートしました。KAMは監査人が監査報告書に記載するものですが,KAMは監査の過程で監査役,監査役会,監査等委員会,または監査委員会(以下,監査役等)と協議した事項の中から絞り込まれ決定されていきます。そこで,まずはKAMの決定プロセスの...