KAMの本適用に関する座談会 第3回 利用者編

みずほ証券株式会社 グローバル戦略部 産官学連携室 上級研究員 熊谷 五郎
三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社 インベストメントリサーチ部 シニアアナリスト 辻野 菜摘
[司会・進行]青山学院大学大学院会計プロフェッション研究科 教授 町田 祥弘

( 10頁)
 監査上の主要な検討事項(KAM)の本適用に関する座談会の第3回は,利用者編をお届けする。KAMを監査人とのコミュニケーション・ツールと捉えるアナリストは,KAMをどう評価し,何を期待しているのか。現状の課題や改善の方向性などを議論していただいた。

町田祥弘氏(以下,町田)  KAMに関する座談会の第3回目として,本日は監査報告書の利用者の方々にお集まりいただきました。初めに自己紹介を兼ねてKAMの制度や実務に対するご自身との関わりや認識をお聞かせください。

熊谷五郎氏(以下,熊谷) みずほ証券・グローバル戦略部産官学連携室・上級研究員の熊谷です。財務諸表利用者としてセルサイド・アナリスト,バイサイドのポートフォリオ・マネージャーの両方を経験し,現在は主に制度調査に携わっています。特に最近の10年ほどは財務報告との関わりが強く,会計基準や非財務情報の開示等を扱ってきました。KAMについても新制度として我が国に導入される段階から,金融庁の企業会計審議会・監査部会において財務諸表利用者の代表として審議に参加していました。財務諸表利用者にとって監査制度は非常に重要なものであるにもかかわらず,監査人と...