会計不正の構造【file22】売上高計上の条件は?

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・タイプ(不正の種類):海外子会社において「出荷基準」の外形を整えた売上高計上が,国際財務報告基準(IFRS)の適用にあたり,否定された事例

・業種・業態:美容関連商品の製造・販売

・手法・手口:海外連結子会社が,販売代理先(A社)からの卸先(B社)との合意が得られない状況のもと,販売代理先(A社)へ商品を出荷し,売上を計上した。

今回は,美容関連商品の製造・販売業者甲社の海外連結子会社(乙社)による売上計上をとりあげる。我が国の収益認識(売上計上)基準として,商品を相手先に出荷した段階で売上計上を行うという,いわゆる「出荷基準」が広く認められてきたが,海外の乙社にあっては,IFRSに準拠した会社処理を行っている。IFRSにおいては,「売上取引の対価を回収する可能性が高い」ことが売上計上の条件に含まれている。

今回の事例について,売上計上が否定された経緯を考察する。

1.売上取引の概要

海外子会社乙社は,甲社連結グループ外のA社及びB社について,それぞれ販売代理先及び販売代理先からの卸先と位置付けたうえで,各社と個別に交渉を行った。しかしB社は,A社を含めた3社間での契約を要請し,また,A社から仕...