書評 秋葉 賢一 著『報酬にみる会計問題』

(日本公認会計士協会出版局/本体3,500円+税)

有限責任 あずさ監査法人 開示高度化推進部長 関口智和

( 26頁)

はじめに

本書を拝読した私の第一感は,「すごい本を読んでしまった」というものである。

本書のタイトルを最初に見た時に,私は「 報酬の会計処理 」を解説したものなのかなと勝手に推察してしまっていた。しかし,本書を読み進めていくと,報酬の会計処理の解説に留まらず, 報酬を題材 としたうえで,会計基準の問題,会計実務の問題,更には最近話題になっている非財務情報と会計情報との関係を含め,極めて広範に論じられたものであることが判った。しかも,分析の深度がすごい。

私は,2009年から2016年まで企業会計基準委員会(ASBJ)に在籍し,日本の会計基準の開発に従事したほか,最後の3年間はASBJの常勤委員として,国際関連業務を統轄していた。そうした経験から,会計基準の開発にあたって直面する論点について国内外の関係者と深く議論してきた。このため,本書を拝読するにあたっても,自分が担当してきた部分については「これ,これ...」というように,自分の理解を前提として読み進めることができた。他方,自分が直接担当していない部分については,分析の質・量に圧倒された。以下,その一端をご紹介する。

本書の構成

本書は,「第Ⅰ部 報酬にみ...