ハーフタイム 引当金会計の過去・現在・将来

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わが国の企業会計原則には引当金に関する「注解18」があり,①「当期以前の事象に起因し」,②「損失発生の可能性が高く」,③「金額を合理的に見積もることができる」の3つを設定条件としている。例示された11項目には,収益の控除となる「売上割戻引当金」も含まれており, 会社計算規則第6条 2項を適用すれば「返品調整引当金」も設定できる。「売上割戻」は一定期間内に一定額以上の多額取引が行われたときに売上代金の一部を返金するものであるから販売促進になり,ここで問題視する必要はない。

ところが「返品調整」は,販売した商品を翌期に販売価額で引取る契約によるものだから,安易に"金額を合理的に見積れることは困難だから"という理由で販売時に引当金を設定しないと外部の情報利用者にとって甚だ不都合なことが起こる。正しく設定するには,売買差金のみを対象に引当金を設定するのではなく,"借方:売上高,貸方:売上原価プラス引当金"とすべきであり,さもないと情報利用者をミスリードするリスクが高い。

こうした収益力情報を操作し易い引当金設定条件は,今春から本格的に適用されている新収益認識基準(企業会計基準第29号)によって濫用でき...