<IFRS COLUMN>暖簾に腕押し 第42回 基本財務諸表(その6)

 国際会計基準審議会(IASB)前理事 鶯地 隆継

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制服と私服

夏休みが終わって新学期が始まれば,街で制服を着た生徒を見かけるようになる。他にも警察官をはじめ制服の着用が義務付けられている業種はたくさんある。では,なぜ制服が必要なのか。それは,制服を着ていればその人の社会的役割が分かりやすいからだ。警察の制服を着ている人には,一定の警察サービスが提供されることを期待できる。ただ当然のことながら,警察の制服を着た人も普通の人である。たとえば,警察官の山田さんが制服を脱いで私服になった時,本来の山田さんに戻る。

プライベートではどんな服装をしようと自由だ。私服では個人の個性を自由に表現できる。山田さんという方の人となりを知るには,私服を着ている時の山田さんと接した方がいいのかもしれない。

さて,財務諸表の役割は,企業への資源提供者に対して,資源提供に関する意思決定を行う際に有用な財務情報を提供することである。ここで想定されている企業の役割は,資源提供者に対して適切なリターンを還元することだ。そして資本市場を監督する制度的枠組みは,上述の企業の役割を明確にするために,会計基準で固めた財務諸表という制服を企業に着せるのだ。もちろん企業の個性をもっと知...