【投資家が求める開示】企業分析の視点からみたIFRS財務諸表 第11回 気候変動リスクと財務諸表

~財務諸表で開示するのはなぜ重要か?~

株式会社野村総合研究所 上級研究員 三井 千絵

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筆者らは,投資家等情報利用者を中心に自主的に集まり,IFRS財務諸表の課題について議論するワークショップを年3~4回開催している。このワークショップは,特定の資格や特定の業種に属するメンバーだけの集まりではないという点と,会計基準ではなくむしろ開示の問題を議論するという点が特徴となっている。毎回のテーマは参加者の希望により決めている。最近のテーマはIFRSに直接関連するものにとどまらず,国際的に注目されている開示の論点や動向,今後を見据えた内容へと広がりを見せている。

1.アジェンダ・コンサルテーション2021

前回(本誌3527号)取り上げたように,IASB(国際会計基準審議会)は5年ぶりのアジェンダ・コンサルテーションに取り組んだ。9月27日に意見募集は締め切られたが,これは次の5年間にIASBが取り上げるべきトピックについて広く関係者の意見を募るものだ。2021年3月に発表されたコンサルテーションには22個のアジェンダ候補が掲載されていた。その中の一つが前回取り上げた「無形資産」だが,多くの関係者が注目したのは,やはり22個の候補のうちの一つとして挙げられていた「気候関連リスク」では...