IFRSをめぐる動向 第136回 「のれんと減損」プロジェクトの最近の動向

PwCあらた有限責任監査法人 公認会計士 松田由貴

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1 はじめに

本連載は,主に国際会計基準審議会(IASB)の月次会議等における討議内容に基づき,IFRSをめぐる最新の動向を伝えることを目的としています。今回は,2020年3月に公表されたディスカッション・ペーパー(DP)「企業結合‐開示,のれん及び減損」について,2021年3月より開始されたIASBの再審議の状況について説明します。なお,文中の意見にわたる部分は筆者の私見であることをあらかじめお断りします。

2 プロジェクトの概要と審議状況

(1)DP公表の経緯

IASBは現在,「のれんと減損」プロジェクトを進めていますが,その始まりはIFRS第3号「企業結合」(2004年公表,2008年改訂)に関する適用後レビュー(Post-implementation review)まで遡ることになります。適用後レビューでは,関係者から「のれんの減損損失の認識が遅すぎる,金額が小さすぎる」といったフィードバックがあり,IASBは2015年に「のれんと減損」のリサーチ・プロジェクトを開始しました。リサーチ・プロジェクトでは,主にのれんの事後の会計処理,減損テストの改善及び関連する開示について検討が行われ,...