【EU離脱後の英国】英国会計基準エンドースメント審議会(UKEB)の機能と構図

―独立性と説明責任―

関西学院大学 大学院 教授 杉本 徳栄

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1.はじめに―「指定された機関」としての英国会計基準エンドースメント審議会(UKEB)

2015年の英国総選挙における保守党(保守統一党)のマニフェスト(政権公約)であった欧州連合(EU)離脱の国民投票を実施し,2016年6月23日に「パンドラの箱」が開けられた。EU離脱という「悪魔」を解き放ったデイヴィッド・キャメロン(David Cameron)(Oliver [2016](オリヴァー著,江口訳[2017]))は,「余計なことをした首相」(ブレイディ[2017],282頁)として歴史に記憶される。

2020年1月31日――英国はEUを離脱した。離脱の激変緩和期間としての「移行期間」の期日である同年12月31日が過ぎ,英国の完全離脱により,いわゆるブレグジット(Brexit)問題は決着をみたと一般的には考えられている。

ところがどっこい,解き放たれた「悪魔」がもたらす影響は多大で計り知れない。EU加盟国としての権利などは喪失し,それまでの恩恵や効果を維持するには,国内でそれ相当の新たな制度設計が必要となる。英国の財務報告において,国際会計基準審議会(IASB)による国際財務報告基準(IFR...