Q&Aコーナー 気になる論点(299) 持分法会計(3)

‐段階取得の会計処理‐

早稲田大学大学院 会計研究科教授 秋葉 賢一

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企業会計基準委員会(ASBJ)が2021年9月3日に公表したショート・ペーパー・シリーズ(SPS)第3号「持分法会計についての視点」では,現在の段階取得の会計処理について,否定的な見解を示しています。それは,なぜでしょうか。

SPS第3号では,過去に行った投資は売却されていないにもかかわらず,取得日(支配獲得日)において公正価値で売却した場合と同じ効果を有する段階取得の会計処理は,事象を忠実に表現するものではなく,したがって,投資先に対する支配を獲得した時点で,過去に行った投資を再測定すべきではなく,むしろ,当該投資の簿価を引き継ぐべきであるとしています。

<解説>

IFRS(1)‐段階取得による支配の獲得

2008年改正のIFRS第3号「企業結合」では,段階的に達成される企業結合において,取得企業は,従来保有していた被取得企業に対する資本持分(equity interest)を,取得日の公正価値で再測定し,それにより結果として生じる利得・損失を,適宜,以下に認識しなければならないとしています(42項)。

(1) 損益(profit or loss),又は

(2) その他の包括利益(OCI)①...