<INTERVIEW>ボードメンバーに聞く 最近のIESBAにおける議論の動向
<編集部より> 国際会計士倫理基準審議会(IESBA)は,国際会計士連盟(IFAC)のもとに置かれた,職業会計士のための国際的な倫理基準を作る基準設定主体。近年は「報酬」や「非保証業務」に関する基準を策定し,日本への影響度合いも気になるところだ。 そこで本誌は,IESBAのボードメンバーの一人である,一橋大学大学院の福川裕徳教授にインタビューを実施。福川教授は2017年からメンバーになり,1期3年の2期目を務める。報酬・非保証業務の議論の背景には何があったのか。また,IESBAにおける最新の議論の動向 ①など,自身の見解を交えて話していただいた。 (インタビューは2021年12月7日に実施した。) |
1.最近の議論の動向
――IESBAは2018年に倫理規程の再構成版を公表しました。全面的な見直しということで影響が大きいと言われますが,見直しに至った経緯・概要をお聞かせください。
再構成前の規程(旧規程)については,2010年頃から構成そのものが分かりにくいとの指摘があったため,より分かりやすいものとし,有用性を高めるためのプロジェクトが立ち上がりました。これは「再構成」と言っているように,規程の中身ではなく構成を変えるプロジェクトでした。大きなポイントは,職業会計士が遵守しなければならない「要求事項」と,その要求事項を説明するガイダンスである「適用指針」とを明確に区別することであり,その結果として,要求事項の遵守を徹底することが目的です。旧規程は,基本原則と概念的枠組みを示したパートA,会計事務所等所属の職業会計士向けのパートB,組織所属の職業会計士向けのパートCの3部で構成されていました。例えば監査法人に勤めている会計士は監査法人という組織に所属しているとも考えられるため,パートBとCの両方が適用されることになります。ですが,範囲としては後者の方が広いので,再構成後は,基本原則と概念的枠組みを示すパート1 ② ,組織所属の職業会計士(PAIB)に適用される規定を置くパート2,会計事務所等所属の職業会計士に適用される規定を置くパート3,独立性基準を定めたパート4という構成にし,適用範囲を明確にしています。
【図表】再構成版倫理規程の枠組み
――再構成版の倫理規程では,個別規定の見直しとして「セーフガード」に関する規定も改訂されました...
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