<インタビュー>トレンドとしてのサステナブルファイナンスと非財務情報

~企業に求められるマインドとは~
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金融庁 総合政策局 チーフ・サステナブルファイナンス・オフィサー 池田 賢志

<編集部より>

国内外で急速に進展する非財務情報に関する議論。IFRS財団に設立された国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)の本格スタートは目前に迫り,国内でも財務会計基準機構の下にサステナビリティ基準委員会(SSBJ)およびその準備委員会が設立されることが公表されて審議が始まったところだ。そこで本誌では,2019年3月から金融庁の総合政策局でチーフ・サステナブルファイナンス・オフィサーを務める池田賢志氏にインタビューを実施し,現状への認識や企業に求められるマインドなどについてお話をきいた。(インタビューは2021年12月13日に実施した。)

1.就任以降,加速してきた議論

――2019年3月のご就任以来,サステナブルファイナンスをめぐる国内外の動きには目覚ましいものがありました。ご就任からこれまでを振り返って,いかがでしょうか。

2018年の3月にEUでサステナブルファイナンスの行動計画 が採択されました。それ以降EUでは,その行動計画に沿って法制化が進められてきています。日本でも数年前からTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)などに関しては官民で協力して取組みを進めてきましたが,2020年に当時の菅内閣総理大臣が「2050年カーボンニュートラル」 を宣言してからは特に動きが加速しました。そうした中,金融庁でも「サステナブルファイナンス有識者会議」を立ち上げて議論し,2021年6月に報告書を取りまとめるなどしています。

就任以降の約2年半におけるこうした動きによって,サステナビリティに関する共通認識が世界的に醸成されてきたように感じます。すなわち,広く「サステナビリティ」と呼ばれるものが企業価値に影響するものであり,その影響の大きさを判断するためのインフラ(仕組み)が必要だということと,そうしたインフラを整備するためには企業側の情報開示が必要だということです。その開示のためには国際的に統一された基準がなくてはならないことから,IFRS財団によるISSBが設立されたということになると思います。

――サステナビリティは以前から注目されていたトピックでしたが,ここ数年の機運の高まりは気候変動問題が端緒となっているのでしょうか。

そうだと思います。直接的には,2015年に採択されたパリ協定③が影響し...