<INTERVIEW>リスク情報の開示「最小限のインプットで,最大限のアウトプット」
本号2頁 の通り,事業等のリスクの開示に工夫を凝らす事例が見られる。このうちインターネット関連事業のはてな(東マ,情報・通信業)は項目別にリスク情報を簡便的に図示化した。同社の経理部長・堀内潤一氏に,読み手のわかりやすさのために意識したことを聞いた。 |
――金融庁が更新した「記述情報の開示の好事例集2021」の,事業等のリスクの好事例に貴社の開示が掲載されました。率直にどう感じましたか。
金融庁や投資家が期待を持って企業の記述情報の開示を見ているのだと思います。2019年の「記述情報の開示に関する原則」公表後,事業等のリスクの開示に関する制度が改正され,当社もリスクの洗い出しを丹念に行うとともに,わかりやすい開示を心掛けてきました。その姿勢が評価されて良かったですし,一般的に経理部門は仕事の成果が積極的に表彰されることが少ないので,お褒めいただいて光栄に感じました。
【図表】はてなの事業等のリスクの開示
――各リスク項目の影響の大きさ,発現の蓋然性,評価などを表形式で示したのは,どのようなきっかけ,お考えからなのでしょうか。
表形式での開示は2020年7月期の有価証券報告書から始めました。そもそもリスク情報はこれまで,一般的なリスクを洗い出し,羅列する事例が目立ちました。それが経営者の視点で重要と思われる情報を積極的に開示していく流れの中で,制度変更により顕在化するリスクの可能性,経営成績に与える影響やその対応策など,情報の質と量が格段に増えました。開示していないリスクが顕在化すれば証券訴訟の対象となることも考えられます。
そこで,当社固有のリスク分析に十分時間を割き,まず発現の時期や蓋然性などを文章で丁寧に記述していきました。その結果,2021年7月期の有価証券報告書は8ページにわたる記載となり,リスク項目も24個に上りました。しかし,そのまま読んでも情報の整理が難しい可能性があります。そこで,項目別にリスク情報を表にして記載すれば,読み手が重要と思う部分に当たりをつけやすくなると考え,簡便的に表で示しました。
――表形式になるだけで見た目の印象も変わりますし,理解もしやすいですね。
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「最小限のインプットで最大限のアウトプット」を目指した結果だと思います。表自体は罫線と文字だけで作れますからそれほど大変ではありません...
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