INTERVIEW ESGを企業価値に転換する ~PBR2倍への処方箋(後編)
2.PBRモデル(柳モデル)
西川 前半では、ご著書の『CFOポリシー(第二版)』に詳述されている「CFOポリシー」の核心部分について伺いました( No3556・10頁 )。後半では「柳モデル」とも言われている「PBRモデル」の話に入っていきたいと思います。非財務の情報を財務情報と同期化する試みということで、ESG投資などとの関係で説明されていますが、そのあたりを簡単に説明していただけますか。
柳 当初は「柳モデル(笑)」と(笑)を付けていたんですけど、最近は投資家から「もういらないから取れ」と言われて、海外の論文でも「柳モデル」で採択していただいています。
【図表1】は、日米英の10年間のPBR(株価純資産倍率)の推移です。下の濃い紺色の1倍までのところは総資産から負債勘定を引いた会計上の簿価の純資産です。これが会計上の企業価値ですね。その何倍の企業価値がついていますかというのがPBRですけれども、1倍を超えた部分がBSに載っていない見えない価値です。この部分が投資家の評価している付加価値です。
【図表1】 不都合な真実:非財務資本(ESG)の理解促進が必要では PBR仮説:ESGとPBR 日米英比較
西川 財務会計でいうところの「自己創設のれん」ですね。
柳 そうです。この部分は、残余利益モデルから、将来のエクイティ・スプレッドの価値ともいえるわけですが、見方を変えれば、現在の非財務の価値だともいえます。ESGや人的資本、知的資本の価値のうち投資家に認められた部分が付加価値として乗っているということです。日本のPBRの平均は1倍ちょっとですが、英国及び先進国の平均は2倍ぐらいです。米国の平均はGAFAの活躍もあって今や4倍ぐらいで、BSに載っていない価値が大きくなっています。
このPBR1倍超の部分が付加価値であり、ESGの価値だという考え方が柳モデルの概念フレームワークです。非財務情報とESGをいかに企業価値に結びつけるのか、見えない価値を“見える化”するとも言っています。
次に【図表2】をご覧ください。センターにあるのが株主価値で、下の株主資本簿価がブックバリューです。それを上回るPBR1倍超の部分の市場付加価値(MVA)が、人的資本、知的資本などの価値、あるいは...
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