INTERVIEW 長期的視点に立ち「攻めの開示を」
<編集部より>
自民党・金融調査会の企業会計に関する小委員会は、「企業の情報開示に関する提言」( 本号16頁 )を取りまとめた。サステナビリティ情報の開示、四半期開示・適時開示の両面から、企業と市場の対話をより充実させる必要性を挙げている。いずれも岸田政権が掲げる「新しい資本主義」実現に向けた改革案として示したものだ。
そこで本誌は、企業会計小委員長を務める鈴木
1.提言取りまとめの背景
――始めに、提言を取りまとめた背景をお聞かせください。
2015年にG20からの要請で、金融安定理事会(FSB)に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)が設置されましたが、その背景には気候変動問題が喫緊の課題であることとともに、投資家の短期主義への批判もありました。つまり、「短期的な利益を追求するのではなく、投資家からの資金と企業経営の間の長期的な視点に立った好循環を作るべき」という意識が世界的に高まってきたのです。
長期的な投資に際しては、事業継続リスクを見る上で、気候変動などの物理的リスク、そうした変化に対応するための制度の変更等に係るリスク(移行リスク)など、これまでとは異なった観点でリスク評価をする必要があります。そのためには、長期収益や将来収益を合理的に推測できる定量的・定性的な論理モデルを構築する必要があります。実はこれこそが「新しい資本主義」 ① の根幹中の根幹でもあります。こうした背景の下、「企業会計に関する小委員会」での提言取りまとめに至りました。
――提言では、非財務情報開示が1つの柱になっています。なぜ非財務情報が重要なのでしょうか。
従来からある財務情報は、企業の過去実績に関する情報です。そのため、長期的な視点に立って将来実績について判断するには、財務情報だけでは足りません。そこで必要になるのが、非財務情報です。
非財務情報によって分かるのは、事業継続リスクや将来収益に対する企業の感応度です。国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)はTCFD提言を取り入れて国際的な開示基準のプロトタイプと公開草案を作りましたが、そこでは「ガバナンス」、「戦略」、「リス...
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