Q&Aコーナー 気になる論点(316) ISSBによる公開草案(5)

‐気候関連開示と企業価値‐

早稲田大学大学院 会計研究科教授 秋葉 賢一

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 国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)が、2022年3月31日に公表した公開草案(ED)IFRS S2号「気候関連開示」(S2基準案)では、気候関連開示と企業価値との関係を、どのように考えているのでしょうか。

S2基準案では、企業がさらされている重大な気候変動による物理的リスクや低炭素経済への移行リスク、企業が利用可能な気候関連の機会に関して、4つの基本内容(「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標及び目標」)の開示、さらに、産業横断的な開示と産業別の開示により、企業価値の評価に関連する情報を提供できるとしています。

〈解説〉

S2基準案(1)‐目的と適用対象

S2基準案は、公開草案 IFRS S1号「サステナビリティ関連財務情報の開示に関する全般的要求事項」(S1基準案)と同時に公表され、その目的は、重大な気候関連 のリスク及び機会に対するエクスポージャーに関する情報の開示を企業に要求することにより、財務報告の利用者が以下を可能とすることとしています(1項、BC21項)。

(1) 重大な気候関連のリスク及び機会が、企業価値に与える影響を評価する。

(2) 企業による資源の利用とそれに...