IFRSをめぐる動向 第145回 動的リスク管理に関する最近の検討状況

PwCあらた有限責任監査法人 公認会計士 川西昌博

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1.はじめに

本連載は、主に国際会計基準審議会(IASB)の月次会議における討議内容に基づき、IFRSをめぐる最新の動向を伝えることを目的としています。本稿では、IASBにおける動的リスク管理(DRM:Dynamic Risk Management)に関する最近の検討状況として、2021年4月以降に開催されたIASB会議における議論の概要を取り上げます。なお、文中の意見にわたる部分は、筆者の私見であることをあらかじめお断りします。

2.背景

企業における動的リスク管理は、オープン・ポートフォリオや純額でのリスク管理が前提となっています。IASBは、このような動的リスク管理に現行のIFRS第9号「金融商品」におけるヘッジ会計の要求事項を適用することの困難さを認識し、まず銀行の金利リスクに関する動的リスク管理を議論していました。しかしながら、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響への対応などもあり、IASBの審議は大きくは進捗していませんでした。IASBは、2020年10月から2021年2月の間に、動的リスク管理に関して銀行に対するアウトリーチを実施し、2021年4月からそのフィード...