【サステナビリティ開示】人的資本・多様性に関する開示を巡る国内の動向(後)

有限責任 あずさ監査法人 開示高度化推進部 前田 啓

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1.はじめに

本年6月13日に、金融庁/金融審議会(ディスクロージャーワーキング・グループ)から公表された「金融審議会 ディスクロージャーワーキング・グループ報告‐中長期的な企業価値向上につながる資本市場の構築に向けて‐」(以下「DWG報告」という。)には、サステナビリティに関する有価証券報告書等における開示のあり方について提言が示されている。とりわけ人的資本・多様性に関する開示については、関連する法改正が行われるなど国内における周辺制度の動きも活発化している。

本稿では、前稿(「【サステナビリティ開示】人的資本・多様性に関する開示を巡る国内の動向(前)」( No.3577 (2022年10月24日号))に続く形で、内閣官房に設置された非財務情報可視化研究会によって本年8月に公表された「人的資本可視化指針」の概要を中心に解説する。なお、本文中の意見にわたる部分は、筆者の私見であることを申し添える。

2.人的資本への投資に係る開示の課題

気候変動リスクをはじめとするサステナビリティ課題は、中長期的に企業価値に大きな影響を与えることが想定される一方で、企業収益に直ちに影響するとは限らないため、リスクの...