小説 会計士日記 Episode 4

  中岡 早雄

( 58頁)
【前回のあらすじ】中途採用面接のために東京のオフィスに来た丸井。志願者が到着し、これから面接となる。

「はい、KMFです」

「本日面接で伺った海老塚と申します」

入口に向かった上野さんが海老塚さんを会議室に案内してくれた。

時間は18時5分前だったので、きっちりしている人だなと感心しつつ、とにかく30分くらいで面接を終わらせて、早く飲みに行くかと不謹慎なことを思った。貴重な時間を作って、ちっぽけな会社に面接に来てくれるのは有難いことだと感謝しないといけないくらいなのに。

「丸井さん、会議室にご案内しましたので、面接お願いします」と上野さんが声を掛けてくれた。「はーい」とちょっとやる気なさげに返事をした。いつもこんな感じなので上野さんは何も思わないだろう。

「彼女、スーツですか?」

「はい、スーツです」

「そうですか。僕はパーカーにジーンズですけど…、いいですよね?」

「いつも通りでいいと思いますよ」

「そうですよね。着替えもないので、変えられないですしね」

上野さんとこんな会話を交わしながら、書類とボールペンを持って会議室に入った。

「こんばんは」と挨拶をすると、彼女が椅子から立ち上がり、「こんばんは、海老塚...