<IFRS COLUMN>暖簾に腕押し 第79回 保険とIFRS会計基準(5)

 国際会計基準審議会(IASB)前理事 鶯地 隆継

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温泉旅館

コロナ禍が終わったら是非行きたいとずっと思っていたものは、温泉旅館である。日本の温泉旅館は素晴らしい。旅館に着くとお茶とお菓子が用意されていて、一息ついて温泉街や庭園などに散歩に出掛け、帰ってくると部屋に立派なお膳が揃っている。おいしい料理をいただいて、少しくつろいだ後温泉に入り、帰ってくると部屋には布団がきれいに敷き詰められている。ホテルでは味わえないきめ細かいサービスである。温泉旅館のいいところは基本何もしなくていいことだ。普段家事に追われている家内にとっては殊の外嬉しいサービスである。

何もしなくていいサービスは、実はそのまま保険契約にもあてはまる。ただし、今度は立場が逆で、サービスを提供する方が何もしなくてもいいのだ。どういうことか。保険会社は契約が成立した後は、基本何もしなくてよい。せいぜい、保険料が期日までに払い込まれるかを管理することくらいである。事故がなく、無事満期を迎えると、ありがとうございましたと言って、サービス完了である。保険会社のサービスの本質は、何もしないことである。

IASBはこの保険会社の何もしないサービスのことを“Stand Ready”のサービスと...