会計知識録 第27回 「開示すべき重要な不備」事例から見る海外子会社の内部統制上の課題

~企業の会計・財務活動を解読~

 公認会計士 溝口 聖規

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はじめに

J-SOXが導入されて15年近くが経過し、制度への対応においては随分と効率化が進んだように思います。また、我が国において内部統制の理解が浸透しつつある一方で、大手総合電機メーカーやマニュアル制作企業などによる不適切会計などの不祥事は後を絶ちません。このような不祥事が一度発生すれば、企業に与える損失は計り知れません。したがって、企業にとっては、こうしたリスクへの対応強化が求められます。現在進められている内部統制報告制度の見直しの動きもそうした対応と言えるでしょう。

中でもグローバルに事業展開をしている企業にとって頭が痛いのは、海外子会社に対するガバナンス、内部統制をどう効かすかということではないかと思います。海外子会社は、親会社にとって地理的、心理的な距離が遠くなることもあり、内部統制の構築等の難易度は国内子会社以上に高いとされます。J-SOXを有効に活用しながら、海外子会社の不祥事等の芽を摘むことはできないのでしょうか。本稿では2回にわたり、海外子会社の内部統制の整備・運用及び内部監査のポイントについて説明をしたいと思います。今回は、海外子会社の内部統制上の課題について、事例を紹...