IFRSをめぐる動向 第153回 「基本財務諸表」プロジェクトの最近の動向(2023年1月~2023年5月IASB会議での再審議)

PwCあらた有限責任監査法人 米国公認会計士 古河友紀

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Ⅰ.はじめに

本連載は、主に国際会計基準審議会(IASB)の月次会議等における討議内容に基づき、IFRSをめぐる最新の動向を伝えることを目的としています。今回は、公開草案「全般的な表示及び開示」に対するフィードバックを受けて再審議が行われている「基本財務諸表」プロジェクトについて、2023年1月から5月までに開催されたIASB会議における審議の内容を中心に説明します。それ以前の審議の内容は、本連載の第131回、第133回、第137回、第141回および第147回の解説をご参照ください。なお、本稿の内容は今後のIASBの討議状況によって変更される可能性があり、文中の意見にわたる部分は筆者の私見であることをあらかじめお断りします。

Ⅱ.主な論点と再審議の状況

基本財務諸表プロジェクトのタイムラインは、【図表1】に示したとおりです。IASBは、2022年9月までに主要な論点の再審議を終了し、2022年10月から12月にかけて基本財務諸表プロジェクトに関する的を絞ったアウトリーチを実施しました。大多数のアウトリーチ参加者は、公開草案のフィードバックに対する再審議の方向性を支持し、また、多数の参加者は、...