<IFRS COLUMN>暖簾に腕押し 第89回 概念フレームワーク(5)

 国際会計基準審議会(IASB)前理事 鶯地 隆継

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新旧交代

どの分野においても新旧交代は重要である。最初にある分野を切り開いた世代が老いて、新しい次の世代が台頭する。スポーツの世界などでは、長年君臨してきた王者と呼ばれる人が、新人選手の大活躍を目の当たりにして引退を決心するということがある。政治の世界でも新旧交代があるが、民主主義の発達していない大国では、特定の人が長く権力の座に居座り、様々な弊害を生み出す。

しかし、それにもまして難しいのは制度の新旧交代である。制度というものは、いったん決まってしまうと、それを変えるという力は働きにくい。一番良い例が、国連の安全保障理事会(安保理)である。世界の安全保障はこの制度によって守られているはずなのだが、特定の常任理事国が拒否権を持っているので、本来の役割を果たせずウクライナ戦争が起こった。第二次世界大戦後、経済力での新旧交代は起きているが、それが安保理には反映されない。なぜなら、常任理事国を決める権限をもっているのは常任理事国だからだ。

一方で、技術や理論などには新旧交代がある。これまで正しいと思われた理論でも、新たな理論が構築され、それが正しいと認識されると、これまで正しいと思われてきた理論が...