Q&Aコーナー 気になる論点(346) 製造原価明細書(1)

‐FASBの会計基準更新書(ASU)案‐

早稲田大学大学院 会計研究科教授 秋葉 賢一

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米国財務会計基準審議会(FASB)は、2023年7月31日に、会計基準更新書(ASU)案「損益計算書‐包括利益の報告‐費用の分解開示(サブトピック220-40):損益計算書における費用の分解」(コメント期限:2023年10月30日)を公表しています。これによる棚卸資産及び製造に係る費用を分解した開示は、実質的に製造原価明細書の開示を提案しているのでしょうか。

はい。ASU案では、財務諸表注記における表形式により、棚卸資産及び製造に係る費用を分解し形態別に開示することを提案しており、それは、実質的に連結財務諸表で製造原価明細書を開示する提案と考えられます。

〈解説〉

ASU案(1)‐現状と背景

2023年7月公表のASU案によれば、米国会計基準では、トピック220「損益計算書‐包括利益の報告」において、米国証券取引委員会(SEC)のセクションを除き、損益計算書上、特定の費用項目を表示する必要も分解する必要もありません(BC6項)。

FASBは、2016年8月に公表した意見募集「アジェンダ協議」への回答を受け、2017年9月に、業績情報の分解に関するプロジェクトをアジェンダに追加しました(BC1...