「企業買収における行動指針」について
新日本有限責任監査法人 前経済産業省産業組織課課長補佐・弁護士 保坂 泰貴
一.「企業買収における行動指針」の策定
経済産業省は、本年8月31日、「企業買収における行動指針」(以下「本指針」という。)を策定・公表した ① 。
本指針は、2022年11月に設置された「公正な買収の在り方に関する研究会」(以下「本研究会」という。)における議論を踏まえるとともに、パブリックコメント等の手続を経て策定されたものであり、上場会社の経営支配権を取得する買収を巡る当事者の行動の在り方を中心に、M&Aに関する公正なルール形成に向けて経済社会において共有されるべき原則論及びベストプラクティスを提示するものである。
二.本指針策定の背景
経済産業省では、2021年以降、「ミッション志向」で政府も一歩前に出て大規模・長期・計画的に取り組む「経済産業政策の新機軸」に基づいた政策展開を開始している ② 。新機軸では、「価値創造経営」を柱の一つとして位置づけ、その実現に向けた取組の一つとして、M&Aに関する更なる環境整備にも取り組んでいる。
これまでも経済産業省は、M&Aに関する公正なルール形成を促すという考え方から、M&Aに関する原則や視点、ベストプラクティスなどを整理する指針及び報告書を策定してきてい...
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