Reboot! コーポレートガバナンス2023 【後編】さらに盛り込まれるサステナビリティの要素と、アンチESGの狭間で

株式会社野村総合研究所 上級研究員 三井 千絵

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2023年、日本のコーポレートガバナンスへの取組みはリブートをしたように活発となった。東証がPBR1未満の企業を問題視したこと、金融庁が「重要提案行為」や「共同保有」の定義について議論を開始したこと、また経済産業省が6月8日から「企業買収における行動指針(案)」 のパブコメを異例の2カ月間行ったことなどはこれまでと少し違う。日本はコーポレートガバナンスを企業価値向上のために導入しながら、いまだに持ち合い株の解消も完全には進まず、親子上場もある。そして経営者の交代、企業買収には負のイメージがあったので、今年日本政府のスタンスは大きく変わったと、海外の投資家にも受け止められつつある。

この間の世界の動き―CGコードはサステナビリティへ

CGコード 導入の議論が始まった2014年を思い出すと、導入の目的は「稼ぐ力を取り戻す」であったし、実際にその後株価も上昇した。

ところが世界のコーポレートガバナンスの議論は、その後、ESGのEとS、そしてサステナビリティの議論にシフトしていった。アジアでは多くの国がCGコードを導入しているが、それらはOECDが策定したG20/OECDコーポレートガバナンス原則(...