ハーフタイム 金融危機における国家の役割とプラグマティズム

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資本主義はグローバリゼーション後も生き残ったただ1つの社会経済システムである。このような資本主義について、世界銀行などで活躍してきたB・ミラノヴィッチは「リベラル能力資本主義(米国型)」と「政治的資本主義(中国型)」に区分している(『資本主義だけ残った』みすず書房、2021)。自由と民主主義を基調とする米国型と一党独裁による中国型の分断が高まっているいま、ミラノヴィッチ流の温和な二分法を素直に受け入れる人は少ないだろう。

とくにリーマン・ショックから15年目の2023年春に米国中堅地銀のSVBほか2行やスイス第2の大手行クレディ・スイス破綻(UBSとの合併)はいずれも、それぞれの政府によって迅速に事後処理が行われた結果であり、その様子をじっくり観察した人ならば、日頃は市場主義を支持し政府の介入に反対する人であっても、いざ金融危機となれば中国政府以上の速さで緊急融資と預金者保護を決断し混乱を収めたことに驚いたことだろう。

筆者もその1人だが、そのとき感じた単純な疑問は、①当局はなぜ事後処理を急ぎ混乱拡大の防止に成功したのか、どのような副作用をもたらすのか。②SVBほか2地銀の経営者はなぜリス...