Q&Aコーナー 気になる論点(349) 株主の観点からの会計処理(1)

‐米国基準における共同支配企業の形成‐

早稲田大学大学院 会計研究科教授 秋葉 賢一

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 FASBが2023年8月23日に公表したASU第2023-05号「企業結合―共同支配企業の形成(サブトピック805-60):認識及び当初測定」では、わが国と同様に、株主の観点から、共同支配企業の形成の会計処理を定めているのでしょうか。

ASU第2023-05号では、共同支配企業が、拠出された純資産の支配を獲得するため、取得企業に近いとしており、形成時の共同支配企業の会計処理は、企業の観点によるものです。しかし、株主である共同支配投資企業の公正価値に基づく会計処理との整合性も強調されています。さらに、その形成は、必ずしも新しい法人の設立ではないとしているため、吸収合併や吸収分割による共同支配企業の形成において、既存の企業の資産・負債を公正価値で評価するとすれば、株主の観点から、すべての持分の継続が断たれた会計処理となります。

〈解説〉

わが国における共同支配企業の形成の会計処理

企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」では、共同支配企業の形成も企業結合の定義に含め、それ以外の企業結合と一貫した考え方を適用することとしています(76項)。この際、企業結合には、以下のように、異なる経済...