新・経理実務最前線!Q&A 監査の現場から 第17回 海外事業の継続・撤退の判断に伴う会計上の留意点

EY新日本有限責任監査法人 公認会計士 伊藤 毅

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政情に不安のある海外の地域に事業展開する企業は多くありますが、現地の外部環境の急な変化によりビジネスに大きな影響が生じることがあります。例えばウクライナ情勢を機に現地事業のサプライチェーンが機能しなくなることにより、事業を継続するか撤退するかの意思決定を迫られる可能性があります。また、将来の有事を見越してビジネスモデルを見直し、海外へ移管した事業から撤退することも想定されます。

そのような場合、会社の意思決定に応じて会計上どのような対応が想定されるのか、あらかじめ検討しておくことが有用です。

そこで、今回は政情に不安のある国に事業拠点として子会社を有する場合、有事の際に事業を継続するか撤退するかの意思決定をした際の会計上の留意点について解説します。

なお、本稿の意見にわたる部分は筆者の個人的な見解であり、EY新日本有限責任監査法人の公式見解ではないことを予め申し上げます。

本稿では政情に不安にある国に子会社を持つ企業グループを前提に解説をします。図表1において、事業を継続する場合・撤退する場合、親会社の単体決算・連結決算(在外子会社の単体決算・連結調整仕訳)についてそれぞれ留意すべき点を整理し...